大判例

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名古屋高等裁判所 昭和29年(う)582号 判決

論旨は、原判示第二の事実について、弁護人が、被告人は、犯行当時心神喪失の状態にあつた旨を主張したのに対し、原判決は、その主張を排斥しているが、弁護人の右主張には、心神喪失より程度の低い心神耗弱の主張を実質的に包含していると認めるのが相当であり、又、被告人も、原審公廷において、判示第二の事実に対する認否の際、その中に酒がまわつて来たので、それ以後どうしたかわからない旨を述べているのであるから、その陳述は、心神喪失乃至心神耗弱の主張をしたものと認められるから、原判決が心神耗弱の主張に対して判断をしなかつたのは、理由不備の違法があり、仮りに右論旨が理由ないとしても、当審において、被告人は、判示第二の犯行当時、少くとも心神耗弱の状態にあつたものであると主張するというのである。よつて、訴訟記録並びに原審において取り調べた証拠について検討するに、被告人は、原審公廷において、判示第二の犯行当時、酒がまわつて来てどうしたかわからない旨を述べ、弁護人も、当時被告人は心神喪失の状態にあつた旨を主張したので、原判決は、挙示各証拠によつて、然らざることが認められるとして、右主張を排斥しているのであつて、被告人及び弁護人の主張が心神耗弱の主張をも包含しているとは到底認められないので、原判決がその判断を示さなかつたことは相当である。弁護人の所論とする心神耗弱の主張を実質的に包含しているとの論旨は、独自の見解であつて、当裁判所の採用しないところである。更に、当審において新たに主張する心神耗弱の論旨について考察するに、原判決挙示の被告人の司法警察員及び検察官に対する各供述調書並びに原審における各証人の供述に徴すれば、被告人は、当時相当酒を飲んでいて、多少酔つていたことは認められるが、未だ心神耗弱の状態にあつたものとは認められないので、右主張は採用できない。論旨は、すべて理由がない。

(裁判長判事 高橋嘉平 判事 山口正章 判事 小沢三朗)

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